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童話。連載中。
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ゾウが道路工事をし、ずしんずしん音がし、大地が揺れていました。

ハムスター捜査官はシェパード警官の背中に乗って、パイプを咥えています。森の中にはゾウが歩いてつくった、とても大きな道がありました。リスやウサギたちが、シェパードが通り過ぎるのをじっと見つめています。シェパードが通ると辺りが静かになります。シェパードににらまれると、取調べにあって檻の中へぶち込まれるという噂もあったからです。

シェパードに乗ったハムスター捜査官が辺りを見回していますと、スピードを落としたクロネコがそばを通り過ぎました。不思議なことに、クロネコは白いマスクをしていました。ハムスター捜査官は、何かうさんくさいものを感じました。

ヒヨコの死がいでも落ちていないか、ハムスター捜査官は途中で何度かとまりました。

そのまま進んでいくと、またしてもマスクをしたクロネコが荷物を背中にくくりつけて歩いていました。ハムスター捜査官は、乗り物の背中をとんとん叩いて尋ねました。

「シェパードくん、なぜ彼らはマスクをしているのだ。いま病気でも流行しているのかね」

「そうらしいですね。何かインフルエンザが流行っているようです」
「あれで防げるのかね」

「さあ、テナガザル医師によりますと、マスクは気休めらしいですよ。まあ、何もしないよりはましでしょうが」

ハムスター捜査官は目を閉じて眠りながら考えました。ヒヨコ、ヒヨコ……。インフルエンザが流行っている。ニワトリはインフルエンザにかかりやすい。かつてニワトリ王国でも大勢が死んだ。ニワトリ王国ではインフルエンザをとても熱心に研究し、薬の開発を行っていた……

ハムスター捜査官は、ヒヨコ王子が生きている可能性が万に一つもないような気がしてきました。森の中で迷ったとして、無事だったとしても、インフルエンザに襲われるかもしれません。

ヒヨコ、ヒヨコ……。ハムスター捜査官は、道端の石ころや葉っぱの近くに、小さな死骸がないか、首を回しました。

目的のカラス兄弟のアジトは、ブラックリストの上の方に載っていて、マークしていましたので簡単に到着しました。

大きなモモの木の天辺に、黒い箱のような建物がありました。

ハムスター捜査官は降りて虫眼鏡で辺りのやぶを調査し、シェパード警官は周辺のにおいを嗅ぎました。落ちているものは、魚の骨とか、盗んだ食べもののからばかりでした。

「ここにはないようだ。 シェパードくん、カラス兄弟を呼んでくれたまえ」

「わお、わお」とシェパードは何度も吠えました。

しばらくすると、ばさばさと音がし、「かねー、かねー」とカラスの鳴き声がしました。肉の厚い体をした黒い鳥が舞い降りてきました。

シェパード警官はハムスター捜査官に代わって言いました。

「おい、カラス兄弟。お前たち、ニワトリ王国の王子を連れ去っただろ。どこへやった」

 カラス兄弟の名前は、兄はダミアン、弟はヨハンといいました。

 どちらも、世界の破滅を願っているようなカラスでした。

 ダミアンは笑いました。

「ヒヨコ王子? 知らないね。ヨハン、君は知っているかい」

「いいや。ヒヨコ一匹のために、わざわざこんな所まで来たのかい」

 ハムスター捜査官は、なめた口をきくカラス兄弟に、うそを言いました。

「もう、ヒヨコ王子をさらった犯人は君たちだと確定しているのだよ。ニワトリ王国の中で、連れ去る君たちを見たというものがいるのだ」

「ヨハン、聞いたかい。それは面白い話だね。ヒヨコは俺達が連れ去ったらしいよ」

「それなら、ダミアンがもう食べてしまったかもしれないね」

 面白い面白いと、カラス兄弟はげらげら笑い始めました。ふざけたカラスだと、ハムスター捜査官は腹が立ち、シェパードの毛を引っ張りました。するとシェパード警官は大きく吠えました。

「きさまらを、ヒヨコ王子殺しの罪で逮捕する!」

 ダミアンは笑いました。

「逮捕してどうするんだい。ヒヨコ王子が戻ってくるのかい」

 ハムスター捜査官は、怒って叫びました。

「お前たちはからす兄弟は死刑にする! 色んな動物からカネをとりまくりおって! お前たちがこの世にいたら、ろくなことはないのだ!」

「かねーかねー。捕まえられるものなら、捕まえてみな」

 ダミアンがそういってはばたくと、ヨハンも最後にこういって宙に浮いきました。

「かねーかねー。おれたちが違いなくても、この世はろくなことが起きないさ。どうせ、ニワトリ王国なんて、滅びるんだ。皆消えていなくなるんだよ。もうすぐインフルエンザが大流行するのさ」

「何でそういえるのだ?」

「かねーかねー、ばら撒く奴を見たのさ。俺たちよりもっと悪い奴がいるってことさ。世界を終わりにしてくれるヒーローさ」

 ヨハンは不気味なせりふを残して、ハムスター捜査官の前から飛び立っていきました。

 ヒヨコ探しをしていたハムスター捜査官は、背中から冷たい水を浴びたような気がしました。

もし、カラス兄弟の言葉が本当なら、インフルエンザをばら撒いている、とんでもない悪人がいることになります。ハムスター捜査官は何か怖くなりました。

「ただのデマですよ。カラス兄弟はうそつきですから」

 そういってシェパードは森を歩き続けました。ハムスター捜査官は腕を組んで考えていましたが、やはり景色がいつもと違うような気がします。

いつも森の中をにぎわせ、並んでいた、ウサギやキジなど派手な商売屋がほとんどいないのです。そして道をすれ違うのはほとんどマスクをしたクロネコだけなのです。ふきつで、これは何か起こりそうな気がします。

ハムスター捜査官は、動物社会の安全も守らなければいけません。そのために皆からたくさんのお金をもらっているのです。ヒヨコ王子探しも大事ですが、インフルエンザをばら撒く悪い奴も探さなければ、と思いました。

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